任意後見制度は、未来の自分を守る備え
今、自分のことは自分で決められる。でも、その状態がずっと続くわけではありませんよね。例えば、高齢になって認知症になったり、急な事故で判断力が低下したりする可能性も考えられます。そんな時に備えて、未来の「自分を守る人」を今のうちに選べる制度が「任意後見制度」です。
任意後見制度って何?
任意後見制度は、自分がまだしっかりとした判断ができるうちに、将来的に自分の代わりに決断をしてほしい人を選ぶ制度です。これはただの約束やお願いではなく、法的にしっかりとした契約(公正証書)に基づきます。
具体的な手続き
- 依頼者(自分)と受任者(後見人になる人)を選ぶ
- 双方で契約内容を決める
- その内容を公正証書にして、正式に契約を結ぶ
この公正証書がないと、任意後見契約は無効です。
監督人も必要
後見人がちゃんと契約通りに行動しているかを確認する「後見人監督人」も選ぶ必要があります。
任意後見制度と法定後見制度の違い
- 任意後見制度: 未来のリスクに備えて、自分で後見人を選べる。
- 法定後見制度: すでに判断力が不足している場合、家庭裁判所が後見人を選ぶ。
例で考える任意後見制度
たとえば、田中さん(65歳)は、自分が認知症になった場合に備えて、信頼している長男の健太さん(40歳)を後見人に選びました。田中さんと健太さんは、どんな状況でどう行動してほしいかを詳しく話し合い、その内容を公正証書にしました。これで、田中さんが何かあった場合でも、健太さんがしっかりとサポートできるようになりました。
認知後見人は、誰でもなれますか?
誰でも選べる?
基本的には、任意後見人に必要な特別な資格はありません。ですから、家族や親戚、友人、さらには弁護士や司法書士などの専門家、また法人とも契約が可能です。
重要なポイント
- 信頼性: 選ぶ人が信頼できるかどうかは非常に重要です。
- 最善の選択: 常にあなたにとって最善の選択をしてくれる人を選びましょう。
具体的な例
たとえば、山田さん(70歳)は長年の友人であり、信頼している鈴木さん(68歳)を任意後見人に選びました。鈴木さんは山田さんの価値観を理解しており、山田さんが何を望むのかよくわかっています。
任意後見人に選べない人:法的な制限がある
- 未成年者: 18歳未満の人は選べません。
- 家庭裁判所で命じられた人: すでに家庭裁判所から何らかの制限を受けている人も選べません。
- 法定代理人、保佐人、補助人: これらの立場にある人も選べません。
- 訴訟中の人: 本人に対して訴訟中、または訴訟したことがある人とその配偶者、直系親族も選べません。
- 不正行為がある人: 著しく不正な行為があると認められる人も選べません。
具体的な例
例えば、佐藤さん(50歳)は、自分の弟(45歳)を任意後見人に選ぼうと考えましたが、弟は過去に詐欺事件に関与していたため、選べないことが判明しました。
任意後見人ができることはなんですか?できないことはありますか?
任意後見人が代わりに行えるのは、基本的に「法律行為」です。これには以下のような事項が含まれます。
- 財産管理: 預金の引き出しや不動産の売買など
- 医療・介護サービスの契約: 病院での治療や介護サービスの利用など
- その他の法的手続き: 登記や申請など
具体的な例
例えば、佐々木さん(80歳)が認知症になった場合、任意後見人である娘の美智子さん(50歳)が、佐々木さんの預金を管理したり、必要な医療サービスを選んだりすることができます。
任意後見人ができないこと:日常生活や個人的な選択は除外
任意後見人が行えないのは、以下のような事項です。
- 日常の家事: 食事の準備やペットの世話など
- 介護行為: 身体介護や生活介護、食事、排泄介助など
- 身分行為: 結婚や認知など
- 医療の同意: 手術や延命治療など
- 死後の事務: 葬儀関係など
具体的な例
たとえば、鈴木さん(75歳)が任意後見人として選んだ長女の由美子さん(45歳)は、鈴木さんの財産を管理できますが、鈴木さんの食事や排泄の介助、または葬儀の手配などは行えません。
以上のように、任意後見人ができることとできないことは明確に区分されています。この制度を利用する際は、その範囲をしっかりと理解しておくことが重要です。